
ゴミ屋敷
2024.04.01
近所のゴミ屋敷を通報したら行政はどう対処する?空き家の場合は?
地域にゴミ屋敷があると、安全、衛生、資産価値の面で、近所の自分までリスクを被ります。近所のゴミ屋敷に対して行政はどのように対処してくれるでしょうか。最近問題になっている特定空き家、管理不全空き家のゴミ屋敷に関しても法改正の内容と併せて解説します。
近所にゴミ屋敷があるリスク

「近所のゴミ屋敷に対して直接クレームを入れるのはトラブルの元になりそうで怖い」と思う方は多いのではないでしょうか。しかし、今のところ目立つ実害はなくても、ゴミ屋敷が近くにあることで将来的に大きなリスクを抱えることになります。考えられるリスクを紹介します。
火事のリスク
ゴミ屋敷は普通の家よりも火事になりやすいです。暖房器具の熱等による発火、コンセントに溜まった埃からの発火、タバコの火による発火、さらに放火の標的にもされやすく、近所に住んでいると二次被害を被る可能性があります。
害虫・害獣発生のリスク
ゴミを餌にしたり巣を作る害虫害獣が集まるリスクがあります。当然悪臭も強くなりますし、近隣の住宅にも二次被害が発生します。
資産価値下落のリスク
ゴミ屋敷の近くに住みたいと思う人はいないはずなので、周辺の良質な住人の退去が立て続けに起きたり、空室が埋まりにくくなります。リスク要因が近くにあることで自分が保有している物件も売りづらくなり結果として資産価値が下がります。
治安の悪化
ゴミ屋敷の近くの賃貸物件の価格が下落することで、これまではいなかった層が地域に住むようになります。ひいては治安の悪化も起こり得るため、住みづらいエリアになります。
ゴミ屋敷に対する行政の対処

このようにリスクの大きい近所のゴミ屋敷ですが、本人に苦情を入れるのはなかなか難しく声をかけることを躊躇うものです。また、集合住宅であれば管理会社や大家の連絡先がわからなかったり動きが悪く解決に動いてくれないことも。そのため、近隣のゴミ屋敷に関する相談は最初から行政に入れたほうが解決までスムーズに運ぶ可能性があります。行政に通報した場合は下記のようなフローが一般的です。
①自治体の職員によるゴミ屋敷の住民への是正勧告
②住民に是正の意思がある場合は行政が撤去サポート
③是正の意思が見られない場合は強制撤去
ゴミ屋敷の撤去に関しては自治体ごとのルールによって運用がかなり異なります。法律で定められてはいないため、自治体によって撤去まではしてくれないところもありますし、自費で撤去ができない人に向けて補助金を支給するところもあります。まずは、自分の住んでいる自治体がどのようなルールで運用しているか確認してみましょう。
ゴミ屋敷には法的な罰則があるのか

ゴミ屋敷の撤去に関する法律は定められていませんが、地方自治体はゴミ屋敷条例を定めることが可能です。条例を定める場合、2年以下の懲役、禁固、100万円以下の罰金というなかなか重い罰則をゴミ屋敷の住民に課すことができます。
しかし、重い罰則を設けてもゴミ屋敷問題がなくならないのは、身体・精神的な疾患によってゴミ屋敷になってしまっていたり、そもそも困窮しており、罰金が抑止力にならなかったりすることが多いのが原因です。そのため、自治体によってはゴミ屋敷を行政が強制執行するのではなく、ゴミ屋敷の撤去と今後繰り返さないために行政がサポートするという方向性のところもあります。例えば京都市では、ゴミ屋敷対策プロジェクトチームや地域あんしん支援員によるゴミ屋敷住民への支援を行っていますし、神戸市ではごみの撤去に要する費用を最大100万円まで支援しています。
近くの空き家がゴミ屋敷化したら

近隣がゴミ屋敷だったとしても、住民が住んでいればここまで説明したような行政からの働きかけもできますし、本人が是正に動いてくれる期待も持てます。問題は空き家がゴミ屋敷化した場合です。空き家がゴミ屋敷になる原因としては以下のようなものが考えられます。
- 家財等を残したまま失踪し、家が老朽化したり腐食した
- 空き家へのいたずらや、浮浪者の侵入によりゴミがたまった
- 空き家の敷地にごみの不法投棄が相次ぎゴミ屋敷になった
- 相続のトラブル等で残置物に手をつけられないまま長期間経過した
このようなゴミ屋敷に関しても結局はまず行政に連絡して対処してもらうしかありませんが、所有者と連絡が取れなかったり、所有者不明だったりで、対処が進まない可能性が高いです。だから、もし近隣の空き家がゴミ屋敷化する兆候が見られたり、草木の手入れが全くされていない状態があれば早めに行政に連絡するのが良いでしょう。
空き家対策特別措置法と管理不全土地・建物管理制度

これまで適切に管理されていない空き家に対処する法律は空き家対策特別措置法がありました。空き家対策特別措置法は適切に管理されておらず周辺の環境に悪影響を及ぼしている1年以上人が住んでいない空き家(通年で電気・ガス・水道などの使用が確認できない)に適用されます。具体的には特定空き家に指定され、罰金刑や強制撤去の執行が行えるというものです。また、通常空き家に適用されている固定資産税が1/6になる優遇措置が解除されます。特定空き家に指定される空き家の条件は下記のように定められています。
- 倒壊等の恐れがある
- 著しく不衛生
- 管理がされておらず景観を損ねている
- 周辺の生活環境に悪影響を明らかに及ぼしている
上記のレベルのゴミ屋敷が特定空き家になるまで待つしかないというのは、これまで近隣の住民にとって大きな不利益でしたが、令和5年6月に法改正があり「特定空き家」に至らない「管理不全空き家」も税制優遇措置が解除されることが決定。管理不全空き家とは放っておけば特定空き家になることが予測できる空き家のことで、近隣住民とすれば早めに行政が対処することを期待できるようになりました。ただ、管理不全空き家のゴミ屋敷に関しては撤去の強制執行権はないため、あくまで税制優遇措置解除を武器に、空き家の所有者にしっかり管理させることを目的にするものです。ちなみに特定空き家に指定されたゴミ屋敷で最終的に所有者不明という結論になった場合は、行政の費用負担により撤去、取り壊しが行われます。
近隣の空き家はまず行政に相談

ゴミ屋敷は放置しておけばおくほど、量が増えることにより撤去が大変になりますし、その他にも害虫・害獣の駆除、特殊清掃などが必要になることで、費用が膨らんでいきます。放置期間が長くなればなるほど、所有者の費用負担が大きくなることから、支払えないことを理由に撤去がしづらくなっていきます。
ゴミ屋敷になる原因は精神的・身体的な疾病や障害であることが多いため、周囲の人々が気づいてあげることが重要です。そのため見た目でわかるゴミ放置や汚れ、異臭、害虫・害獣の発生などに気づいた場合は、まず行政に相談しましょう。早めに対処してあげることでゴミ屋敷の住人も地域も最終的な負担を減らすことができるはずです。