
共有持分
2024.03.18
共有持分と準共有持分の違い。売買・譲渡で特に気をつけることは?
借地権付き住宅において、準共有持分という言葉を耳にすることがあります。共有持分と準共有持分にはどのような違いがあるのでしょうか。今回は扱いが非常にデリケートな準共有持分について、譲渡・売買という特に気をつけることを中心に説明します。
共有持分とは?

共有持分とは、複数の人が一つのものに対して所有権を持っている場合の各々の所有権の割合をさします。複数の人で共有持分を分け合うことは、不動産に限らず所有権が発生する事柄であればなんでも起こり得ます。ただ、一般的に不動産の共有持分という話題においては、いわゆる土地や建物の所有権について述べることが多いです。例えば相続において兄弟3人が実家の土地家屋の共有持分を分け合うといったことはよく起こります。
準共有持分とは

準共有持分とは「所有権以外」の権利を他の人と分け合っている割合を指します。不動産の準共有持分でよく話題になるのが借地権や地上権です。特に複数人で準共有持分を分け合う状態になっている借地権は珍しくありません。この場合、底地を所有している地主が別でおり、その上に立つ借家の準共有持分を分け合っているということになります。
共有持分と準共有持分の運用ルールを比較

似たような言葉ですが、共有持分はモノの持分を分け合っている状態、準共有持分は権利の持分を分け合っている状態です。共有持分と準共有持分では運用のルールに異なる点があります。準共有持分の方が運用の縛りは厳しいのでしっかり抑えておきましょう。
相続はできるか
共有持分:可能
準共有持分:可能
共有持分も準共有持分も相続可能です。そのため、親から子、さらに孫と代が進んで行くごとに、共有持分権者、準共有持分を持つ共有者が増えていき、収拾がつかなくなるケースも見られます。
持分の売買・譲渡は可能か
共有持分:可能
準共有持分:可能だが厳しい制限あり
自分の持分を売却や譲渡することは共有持分でも準共有持分でも認められています。ただし、共有持分は誰の承諾を得ずに自由に売買・譲渡ができるのに対し、準共有持分はかなり厳しい制限があります。ここから細かく説明をしていきます。
準共有持分の売買・譲渡の制限とは

今回は借地権の準共有持分という前提で話を進めます。まず、頭に入れておく必要があるのは準共有持分の借地権を売却・譲渡する上では、地主の承諾が必要です。ただし、実際は承諾なしでも譲渡が行われているケースもあります。相続や遺産分割における一連の手続きの中で、既存の共有者間で準共有持分の譲渡が行われる場合です。例えば4人の準共有持分を持つ人がいたが、遺産分割の際に3人が残りの1名に準共有持分を譲渡するような場合、地主の承諾なしでも問題ないとされています。
問題ない理由は新しい登場人物が現れておらず、地主が不利益を被る可能性が考えにくいからです。ただ、これは実際に問題が起こることが考えにくいからOKというだけで、建前としては「地主と借地人の信頼関係を維持する意味で承諾を取るべき」という考え方があります。問題は第三者に準共有持分を譲渡・売却する場合です。こちらに関しては絶対に地主に承諾を取らなければいけません。こちらに関しては準共有持分だからというよりも借地権がそういうものだからといった方が正しいです
借地権の譲渡・売買を行う際は必ず地主の許可を取らなければいけません。また、大規模リフォーム・増改築を行う際も地主の承諾と同時に承諾料を支払うことが一般的です。つまり、借地の上に立っている建物の状態や権利関係が変わるときは必ず地主の許可を取らなければいけないと考えましょう。上記から、第三者に借地権の準共有持分の譲渡・売却を行うことは、権利関係が変わることを意味するため当然地主の許可が必要です。借地権の準共有持分を第三者が持つことで、信頼関係ができていない人間の登場により地主が不利益を被るリスクにつながります。
もし、地主に無断で第三者へ準共有持分を譲渡・売却したらどうなるか。借地権が消滅します。準共有持分を持っている誰か一人でも無断で譲渡・売却した時点で、借地権が消滅し、全員が保有している準共有持分が水の泡になります。このようにルールを破った際のペナルティが非常に大きいのが借地権の準共有持分です。保有している全員がよく理解しておかないと、大きなトラブルになる可能性もあるので注意が必要です
準共有持分を持ち続けるメリットはあるのか

借地権の準共有持分を持っている人には、持分に応じて借家を使用する権利があるということになります。ただ、そこに住んでいるなら恩恵がありますが、物件から離れている場合は普段の生活でメリットはあまり感じられません。準共有持分は投資的旨みがあるものでもありません。また、借地権付き住宅の場合、大規模リフォームをする場合にも地主の承諾が必要ですが、さらに準共有持分を持っている人が何人もいる場合、全員の承諾も必要になります。つまり物件の運用においても自由度が低く、何かと承諾・確認フローを通さなければならないのが借地権の準共有持分です。
準共有持分をよく理解していなかったために地主との間にトラブルになるケースもあります。借地権ありマンションに住んでいる場合などでよく起こり得ます。マンションに住んでいると土地が誰のものかという意識は持ちにくいですが、土地は地主のもので住民は居室の借地権を持っているという構造のケースが多いです。例えば親子でお金を出し合ってマンションを1室購入した場合、借地権の準共有持分を分け合っている状態となります。その状態で地主に無断で親が子供に生前贈与で子供に借地権を売却した場合、ペナルティとして借地権が消滅してしまう可能性があるのです。その結果、借地権が消滅したのだから部屋を売り渡すようにと、地主から迫られることが考えられます。
しかし、「このケースは既存の共有者の間で準共有持分の売買・譲渡なので、問題ないのでは?」と思う方もいるかもしれません。確かにそうなのですが、あくまで問題ないことが多いというだけで、基本は地主の承諾が必要であるというのは前に述べた通りです。ちなみに相続の際に親から子に準共有持分がわたる分には特に地主の承諾は必要ありません。このように準共有持分は持つメリットよりも、付随する不安要素の方が大きいと言えます。準共有持分を持つことで、何らかの影響力を行使したいという目的であれば役に立つこともあるかもしれません。
準共有持分あり物件の処分に困ったら

このように非常に扱いづらい準共有持分ですが、持分を持っている共有者がたくさんいる状態は地主はもちろん借地権者にとっても困った状況です。準共有持分が放置された状態になることで相続人が増えていき、収集がつかない状態になることも考えられます。共有者同士はもちろん、共有者と地主の連絡も人が増えれば増えるほど取りにくくなるからです。
準共有持分が増えて複雑になる前に一本化することが望ましいです。また、複雑化した物件でもその状況を解消しないと次の一手が打てません。なんでも不動産買取では準共有持分ありの借地権付き住宅等、他社では扱いが難しい物件についてご相談を承っております。今すぐ処分したいということでなくても構いませんので、まずはお話を聞かせてください。