
事故物件
2024.06.17
不動産事故物件の告知義務:買主・売主が知っておくべき法律と対策
不動産取引で不安な「事故物件」の告知義務について、最新の情報を分かりやすく解説します。告知義務の対象となる事件、告知義務の法的根拠や期間、告知義務違反によるトラブルを未然に防ぐための必要な知識を見ていきましょう。
不動産事故物件とは

不動産事故物件とは、一般的に、その物件内で殺人、自殺、火災などの事件・事故が発生し、心理的な瑕疵があるとされる物件を指します。単なる心理的な瑕疵だけでなく、物理的な瑕疵(建物の損傷など)を伴う場合もあります。 この心理的な瑕疵が、物件の価値を下げる要因となる可能性があります。そのため、不動産取引においては、買主が安心して購入できるように、売主には告知義務が課せられています。
事故物件の定義と種類

法律上、「事故物件」の明確な定義はありません。一般的には、「人が死亡した事件・事故」が発生した物件とされています。 ただし、死亡原因や発生場所、経過時間などによって、告知義務の有無や範囲が変わる可能性があります。主な種類は以下の通りです。
上記の他に、事件・事故そのものは発生していなくても、近隣で発生した事件・事故の影響を受ける場合もあります。例えば、隣家で殺人事件が発生した場合などは、告知が必要となる可能性があります。また、告知義務の対象となる期間は明確に定められていませんが、一般的には3年から5年程度と言われています。ただし、裁判例によっては、それ以上の期間でも告知義務が認められたケースもあります。
告知義務の対象となる事故
告知義務の対象となる事故は、主に人が死亡した事件・事故です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 殺人
- 自殺
- 火災による死亡事故
- 孤独死
- 事故死(転落死、感電死など)
ただし、病死や老衰による死亡の場合、告知義務は必ずしも発生するとは限りません。 また、告知義務の範囲は、事件・事故の内容、発生場所、経過時間などによって異なります。 具体的な判断は難しい場合もあるため、専門家(弁護士や不動産会社など)に相談することが推奨されます。
告知義務の法的根拠

不動産取引において、事故物件に関する告知義務は、宅地建物取引業法によって定められています。この法律は、不動産取引の公正さを確保し、消費者保護を目的としており、事故物件の告知義務もその一環です。
宅地建物取引業法における告知義務
宅地建物取引業法第47条には、重要事項説明書の記載事項として、物件の物理的欠陥や心理的瑕疵に関する事項が含まれています。心理的瑕疵とは、物件内で発生した殺人、自殺、火災などの事件や事故により、一般的に嫌悪感を与えるような事情を指します。これらの事実は、買主の購入意思に重大な影響を与える可能性があるため、売主や宅地建物取引業者は、買主に対して告知する義務があります。告知義務は、売主だけでなく、媒介を行う不動産会社にも課せられています。具体的には、宅地建物取引業法施行規則第16条の2には、告知すべき事項として下記のような例が挙げられています。
殺人
物件内で殺人事件が発生した場合
自殺
物件内で自殺があった場合
火災
物件内で火災が発生し、建物に損害が生じた場合
その他
上記の他に、告知が必要と判断される事故や事件(例:孤独死など)
告知義務違反の罰則
売主や宅地建物取引業者が告知義務を怠った場合、宅地建物取引業法違反として、業務停止命令や罰金などの行政処分を受ける可能性があります。また、買主は、売買契約の解除や損害賠償請求を行うこともできます。告知義務違反による損害賠償は、物件の適正価格との差額や、引っ越し費用、慰謝料などが含まれる場合があります。損害賠償の範囲や金額は、個々のケースによって異なりますので、専門家への相談が不可欠です。
告知義務の対象者

不動産取引における事故物件の告知義務は、主に売主側にあります。しかし、買主側にも一定の確認義務が存在します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
売主の告知義務
売主には、買主に対して物件に関する重要な情報を告知する義務があります。これは、売買契約が成立する前に、買主が物件について十分な情報を得て、適切な判断を下せるようにするためです。特に事故物件の場合は、心理的な影響が大きいため、告知義務は非常に重要となります。告知義務の対象となる売主は、物件の所有者である個人だけでなく、不動産会社などの宅地建物取引業者も含まれます。売主が個人で、不動産会社が仲介に入っている場合、不動産会社にも告知義務が生じます。つまり、売主と不動産会社は協力して、買主に対して適切な告知を行う必要があります。
告知義務の内容は、単に「事故物件です」と伝えるだけでなく、事故の内容(事件・事故の種類、発生日時、場所など)についても具体的に説明する必要があります。また、事件・事故後の現状(清掃、リフォームの有無など)についても伝えることが重要です。ただし、告知義務の範囲は、買主の意思決定に影響を与えるような重要な事実に限られます。例えば、近隣で起きた事件・事故や、売主の個人的な事情などは告知義務の対象外となります。売主が告知義務を怠った場合、買主は契約を解除したり、損害賠償を請求したりすることが可能です。そのため、売主は告知義務の範囲を正しく理解し、誠実な対応を心がける必要があります。
買主の確認義務
買主には、物件について積極的に情報収集を行う確認義務があります。売主からの情報だけでなく、自ら周辺環境を調べたり、インターネットで情報を検索したりするなど、購入前にできる限りの調査を行うことが重要です。特に中古物件の場合は、築年数や設備の状態だけでなく、近隣トラブルの有無や周辺環境の安全性なども確認する必要があります。また、事故物件の可能性がある場合は、売主や不動産会社に直接確認することも重要です。買主が自ら確認できる範囲の情報については、売主の告知義務の対象外となる場合もあります。ただし、買主がすべての情報を完璧に把握することは困難です。そのため、売主との良好なコミュニケーションを図り、疑問点があれば積極的に質問することが重要です。また、必要に応じて専門家(弁護士や住宅診断士など)に相談することも有効な手段です。

売主と買主がそれぞれの役割を理解し、協力して情報共有を行うことが、不動産取引におけるトラブルを未然に防ぐために重要です。
まとめ

この記事では、不動産取引における事故物件の告知義務について解説しました。告知義務の対象となるのは、殺人や自殺、火災などによって心理的な瑕疵が生じている物件です。告知義務は宅地建物取引業法に規定されており、売主には買主に対してこれらの事実を告知する義務があります。事故物件の告知義務に関する豊富な知識と経験を持つなんでも不動産買取では、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。お気軽にご相談ください。